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Home潮田登久子本の景色
潮田登久子 Tokuko Ushioda

本の景色 BIBLIOTECA



















様々な時代に多様な運命を辿ってきた「本」に触っていると、不思議な感慨が湧いてきます。 ヨーロッパのどこかの国の教会の祭壇で、王様のように座っていた、ひとかかえもある聖書が目の前にある不思議。鉄と木と麻縄と羊の皮で作られたそれは、長い歴史の中で、見るも無惨に変わり果てた姿をさらしています。わずかに残る羊の皮の上に印された赤色の四線譜の上で踊る四角い音符からは、はるか昔の人々の祈りが聞こえてくるではありませんか。 室町時代なのか、或いは江戸のものなのか、黄ばんだ和紙にかかれた屏風仕立ての経文に、一面星屑のように穿られた無数の穴は、小さな昆虫のシバンムシが、来る日も来る日も経を唱えるように食んでいた証ではないかと思ったりしています。 「本」をオブジェとして写真撮影を試みているうちに、情報の担い手という「本」自体が持っている役割を超えて、新たに「本」そのものの存在が魅力となって浮き立ってきて、興味がつきません。